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改正入管法が成立したらどうなるか? 問題点を放置したままの拙速な議論を許すなジパング協同組合

category : ニュース 2018.12.2 
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1127日、外国人労働者を増やす出入国管理法の改正案が衆院を通過した。

本法案の問題点については、何度か当サイトでも報じてきたが改めて振り返っておきたい。

入管法改正における議論の3つの問題点

第一の問題は、そもそも原則禁止とされている「単純労働」とされる分野での外国人就労としか思えない点。改正案で言うところの「特定技能1号」について、「一定の専門性、技能を有する外国人」などとしているが、なにをもって「一定の専門性、技能」なり「特段の技術、技能、知識又は経験」とするのか、そしてどのような業種が当てはまるのかについては何ら明言できずに話を進めていた点。

第二の問題は、業種どころか受け入れの規模・人数についても何も決まっておらず、「法案が通過してから省令で決める」という事実上白紙委任だとしか思えないものだったのだ。

具体的な項目が何も決まっていないものを、議論せずに決めるというのは議会の軽視どころか無視だとしか言いようがない。

そして第三の問題は、この「入管法改正」で拡大される外国人労働者の「先駆け」とも言える、単純労働を奴隷的に強いられている技能実習生を巡る現状が何ら改善されないままの、「改正」されようとしている点だ。暴行を受けて障害を負った技能実習生が会見を開いたことなどにより、さすがにこの点は各メディアも報じるようになり、あまりに酷い技能実習生の実態が明らかになった。

しかしこれについての政府の反応も酷いものであった。法務省入国管理局が、失踪した外国人技能実習生から聞き取りをした聴取票というものがある。それは、彼らがいかに低賃金・虐待・過剰労働を強いる劣悪な環境で労働を強いられていたのかが克明に描かれた「証拠」とも言えるものであり、これらの資料は入管法改正の問題点を明らかにする上でも必須の資料だろう。しかし、その議論に必要なこの聴取票、2870人分について、政府は閲覧を認めたもののコピーは許可せず、野党議員は各自手書きで書き写す作業を余儀なくされたのである。

そもそもこの資料についていえば、失踪動機について、山下貴司法相は当初、「より高い賃金を求めて失踪する者が約87%」と答弁していた。法務省も国会提出資料のなかで、「失踪動機」を「より高い賃金を求めて:2514人(86.9%)」としていたのだ。しかし、実際の聴取票で明らかになった「失踪動機」を尋ねる質問事項の回答選択肢は、「より高い賃金を求めて」などという選択肢はなかったのである。

このような杜撰な資料・答弁をしておきながら、資料の再度読み込みや建設的な議論をしようとする野党議員に対して資料の複写を禁じて手書きをしろというのは事実上のハラスメントにほかならないだろう。

「議論したらキリがない」と言い切った衆院法務委員会理事

次々と明らかになる捏造・不誠実な答弁・議論を避ける態度に加えて、しまいには衆院法務委員会理事の平沢勝栄議員は次のような言葉を言い放った。

「この問題は議論したらきりがないんです。いくらでも問題点が出てくるんです」

なんと! いくらでも問題点が出てくるならば、その問題点を洗い出してそれぞれ解決するのが筋ではないか。それを「問題点が出るからさっさと決めろ」というような趣旨の発言は明らかに議会を無視しており、大問題だ。

このような、まったく議論が成立しないままに、多数をもって強行採決されて衆院を通過した入管法改正案。参院で審議された後に今国会で成立しそうな勢いである。

外国人労働者への偏見が蔓延し、日本社会が分断される

さてそれでは、この改正入管法が可決・成立し、施行されてばどうなるだろうか?

入管法改正で起こり得ること、第一に、しばしば言われるのは「治安の悪化」である。これは、排外主義的な観点から移民反対を唱える右派がよくいう話だが、実際のところ「外国人が増えると犯罪が増加する」かというような事実はない。警察庁の統計でも明らかだということは以前の記事でも報じた。

ただ、低賃金で過酷な労働条件に加えて、虐待や暴行などがある職場に連れてこられた外国人労働者は、失踪することを余儀なくされるであろう。そうした失踪した外国人労働者は頼る場所もない。彼らを待ち受けているのは、良くて「合法業種への不法就労」、最悪の場合は、犯罪組織などにリクルートされる。

つい最近、脱走した技能実習生を摘発する入管職員を、あたかも「正義の味方」かのように報じる入管プロパガンダ番組が放映されたが、このように外国人労働者が脱走した背景やその根底にある問題について何ら報じずに、ただただ外国人を悪者として報じるメディアによって、なんら疑いもなくこうした番組を見る層の中で確実に外国人労働者のイメージが悪化し、「雰囲気としての治安悪化」が蔓延していくことになるのだ。

「外国人受け入れで治安悪化」のイメージが醸成されるとどうなるか。すでに諸外国でも明らかだが、排外主義が大手を振っては蔓延ることになるだろう。そして社会は分断されることになる。この結果こそが真の意味での「治安の悪化」なのである。

親日国でも反日感情が増し、日本の国際的孤立を招く

また、現在技能実習生を巡るような環境がなんら改善されることなく、受け入れだけが拡大したらどうなるか。

2015年の龍谷大の調査によれば、ベトナム人技能実習生を対象にしたアンケートで、来日前に97%が日本に好印象を抱いていたのが、来日後は40ポイント減少し、その一方で来日前は一人も選ばなかった「印象はあまり良くない」が37%になったという。

これを見れば一目瞭然だろう。大幅に外国人労働者を受け入れたはいいが、人権無視で契約にないような労働までやらされたり、暴行・虐待を受けたりして、親日感情を抱いて来日した外国人の若者に、嫌日感情を植え付けて国に返すという、目も当てられない制度が出来上がるのだ。

いままで以上に多くの外国人労働者を受け入れて、その多くが日本で嫌な思いを受けて国に帰ったとき、果たしてその国全体における日本のイメージはどうなるか? 容易に考えが及ぶ。

いま、戦時中の徴用工の問題が日韓の間に影を落としているが、奴隷的労働を強いられる入管法改正が、将来的に何らかの国際問題に発展しかねないのは否定できないだろう。

また、分断によるヘイトスピーチなどが横行すれば労働者受け入れとは無関係な先進国からも日本はレイシズムが横行する非人権的な国というレッテルを貼られ、国際的な孤立は免れなくなるだろう。

日本人労働者の賃金も上がらなくなる

さらに注目したいのは、「人手不足による財界からの要請」でこの入管法改正が進められたことだ。

人手不足とはいうが、それは主に企業側が正当な賃金を払わないから起きているだけの話だ。財界はずっと賃金上昇を抑えるために正規雇用ではなく非正規雇用を増やすことで労働力を確保しつつ賃金を安く抑えるために動いてきた。それをついに非正規雇用でも日本人が集まらなくなってきたのを外国人に頼ろうというのがこの入管法改正の目的なのだ。

単純労働分野を外国人労働者が補うようになればどうなるか? 日本人の賃金も上昇することはなくなる。「人手不足だからこそ賃上げを」と要求すべきところを、外国人労働者の受け入れで賄えてしまえばその要求は通らなくなるのは間違いない。

この入管法改正の問題は、単に人権問題だけではないことを日本の有権者も認識するべきだろう。

SNSなどでは、外国人技能実習生が低賃金・過酷な労働条件で働かされている現状について「ブローカーに騙されるやつが悪い」などという声が散見したが、外国人どころではなく日本人の労働者も体よく騙されていることを知ったほうが良い。

ざっくりとだが、現行の技能実習制度の問題点が放置されたまま、外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法が施行されたときに起こり得ることをシミュレートしてみた。

未来ある移民受け入れのためにすべきこと

しかしながら、これから未曾有の少子化を迎える日本にとって、経済的な視点からも移民受け入れというのは避けられない課題だ。

だとすれば、この入管法改正を少しでも建設的な、将来の移民受け入れのための土壌を作るようにするにはどうすればよいのか? いくつかの施策を考えてみた。

現行の議会無視のまま進むのを一旦止めて、「キリがないくらい湧いてくる問題点」を洗い出し対策を練るのを前提とした上で、

・受け入れに際して外国人労働者が入国前に多額の借金を背負うようなブローカーの存在を許さないよう対策を講じる。
・技能実習適正化法にあった実習生の賃金を日本人と同等以上にするという規定を徹底させ、入管法改正案にも規定を設けて、違反企業には罰則を設ける。
・現行の入管を「入国在留管理庁」へと格上げするならば、少なくとも入管職員の人権教育を徹底する。
・外国人定住に際して、サポートする公的な機関を設置する。
・ヘイトスピーチやヘイトクライムに対し、毅然とした姿勢で望むようにする。

などの施策を議論し、仮に定住ではない外国人労働者の受け入れだとしても、日本の「人手不足」を補うべく来てくれた外国人労働者が、来る前よりももっと「親日的」になって帰国してくれるような制度作りを目指して欲しいと思う。



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