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「移民」が見た日本 「雰囲気いい方向」「反中韓が残念」 居心地よさの裏に「無関心」ジパング協同組合

category : ニュース 2016.6.27 
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人口増切り札、ただいま在留223万人
 人口減少を受け、安倍晋三政権は女性や高齢者を労働市場に抱え込む「1億総活躍」を掲げる。人口を一気に増やせるのは移民だが、欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う英国の国民投票で、離脱派が勝った背景には移民への反発もあったという。では、移民に対する日本人の度量はどれほどのものなのか。長年日本に暮らす外国人に「空気」の変化を聞いた。

 東京下町のプラスチック工場に勤めるガーナ人のアピアさん(43)を10年ぶりに訪ねた。当時は別の工場に勤めていて、結婚した日本女性との間に長男を授かったばかり。幸せそうだったが、日常生活の不満もこぼしていた。「日本人の同僚と同じ失敗をしても『だから黒人はダメなんだ』と上司に怒られる」「電車で僕の横に誰も座らない」

 今は転職先の職場で正社員として働いている。「僕らは熱心だから、社長さんは『やっぱり外国人は頑張る』と褒めてくれる。僕はグループリーダーで、いろいろ教えるから部下の日本人から『先生』って呼ばれてるよ」

 日本観も随分変わった。「日本人は外国人を分かってきたから特別扱いはしない。電車でも皆、僕の横に座るし、日本人の同僚も『うちに遊びこい』と気軽に誘ってくれる。周りに外国人が増えて、いい方向に変わっているよ」

 同じような変化を1991年に来日したペルー人、ルイス・アルバレスさん(51)も感じている。日本でネット配信しているスペイン、ポルトガル語新聞「インターナショナルプレス」の編集長だ。「外国人と日本人の違いを尊重する人が増えた。90年代はペルー人が事件を起こすと、ペルー人全員が警戒されたけど、今は個別に見ている気がする。日本は他国に比べ反移民、反外国人感情は薄いと思う。でも、反中国、反韓国の意識は確かにある。それさえ克服できれば本当にいい国なのに」

 日本の人口減少は切実だ。内閣府の2016年版「高齢社会白書」によると、15年に約1億2711万人だった総人口は60年には8674万人に激減。高齢化も進み、15年には15〜64歳の現役世代2・3人が高齢者1人を支えていたが、60年には1・3人で1人を支えることになると推計している。労働力の低下も避けられず、経団連は外国人労働者について、さらに門戸を開くよう提言している。

 実際のところ、外国人は増加している。95年には約136万人だった在留資格を持つ外国人は、15年12月時点で約223万人に増え、過去最高に。気になるのは、在留外国人の中で最も多く、全体の約3割を占める中国人の中には日本人との関係悪化を語る人が少なくないことだ。

 日中関連の本を出版する日本僑報社代表、段躍中さん(58)は来日した91年の東京を懐かしむ。「大家さんも近所の人も親切で大事にしてくれた」。その後、自分たちを見る目が変わったのは政治とマスコミのせいだと言う。「中国経済が強くなったのは日本の援助のお陰なのに中国人は感謝せずに恩知らずだとか、沖縄・尖閣諸島の問題がしつこく報じられ、中国人が悪いように思われている。中国人のマナーの悪さを笑うテレビ番組もある。確かに人口13億人の中にはマナーが悪い人はいるが、全体としては向上しています。問題ばかり見るのは、私たちと接しない日本人では」

 段さんは、日常生活で嫌な目に遭うことはあまりないが、不動産関係の外国人差別を感じている。業者間で賃貸物件の情報を流す不動産サイトで中国人を拒否する記述を見たことがあるからだ。

 不動産での外国人差別についてはこんな例がある。欧州からの留学生が13年、京都市のアパートが「外国人不可」のために契約できなかったと京都地方法務局に救済措置を求めた。しかし法務局は「人権侵犯の事実があったとまでは判断できない」と訴えを退けた。

 このような状況に日本人も疑問を持っている。「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表の鳥井一平さん(62)は「不動産関連の張り紙やサイトに外国人を拒否する文言を載せるのは明らかな人権侵害だが、大家の選択の場合は微妙です。いずれにせよ訴える者が少なく、野放しにされています。差別が増えるのは、政府が現実を認めず、受け入れ政策をきちっと取らないからです」と語る。

 人口減少問題の解決策として、移民政策の法制化が必要だと主張する民間団体「移民情報機構」の石原進さん(64)は「不動産の問題なども、外国人受け入れの法的な仕組みと運用を明文化すれば改善される」と考えている。国は移民受け入れを法制化せず、外国人労働者を「技能実習」「研修生」など「短期で帰国する人々」とみなして招いてきた。だが外国人の多くは労働者として日本に残り、結婚し、子を産み、事実上の移民となってきた。この「移民政策なき移民受け入れ」が、住居や日本語教育などの不手際を生み出している、という主張だ。

 石原さんはこう語る。「将来、日本人は少数派になるといった血統主義の亡国論がありますが、現実に外国人はじわじわ増え、日本人の間に彼らを受け入れようという意識は着実に広がっている」。今は人口の2%に満たない在留外国人はいや応なしに増えていくと予測する。

 前出のアルバレスさんも外国人の増加を前向きにとらえる。「周りの空気を読み、独り善がりに振る舞わない、すぐにノーと言わないといった日本人的な態度は、長年日本に暮らした南米人に伝播(でんぱ)し、その子どもたちも幼いころから身につけている。むしろ、移民を介して日本らしい価値観が世界に輸出されていくと思うのです」

 そうなるためには、日本人と外国人が交流を深め、分かり合うことが前提だ。だが、困難だと考えているのは、ギニア出身の歌手、ニャマ・カンテさんの夫で国士舘大法学部教授、鈴木裕之さん(51)だ。「異文化交流はエネルギーがいる。移民してきた人々は越境という困難を乗り越えているので高いテンションを維持していますが、日本人は全体的に沈んでいる。学生を見ても、留学生と交流しようとしないし、日本人同士のコミュニケーションも乏しい。90年代と今とで明らかに変わったのは、日本人が無関心になっていること。移民の受け入れを進めても外国人に無関心な層、意地悪な層、受け入れる層がバラバラに広がるだけで、社会全体の質が上がることにはならないのではないでしょうか」

 アピアさんら外国人が今、日常生活でさほどストレスを感じないのは、この国が彼らを受け入れているからだろう。外国人の居心地がよくなったことは評価したい。でも、その一方で、どこにいてもスマートフォンに目を奪われている日本人の単なる無関心が作用している−−。そんな面もあるのかもしれない。


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