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ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(2)送り出し地の実習生ビジネスと借金による「拘束」ジパング協同組合

category : ニュース 2016.4.27 
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数々の課題が指摘されてきた日本の「外国人技能実習制度」。この制度のもとで働くベトナム人技能実習生を調査し、大学の卒業論文を書いたのは、ベトナムから日本に留学したハノイ市郊外出身のグエン・ヒュー・クイーさん(27)だ。クイーさんはなぜ、技能実習生について卒業論文を書いたのだろうか。
前回(「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(1)差別と搾取の技能実習制度と『憧れの日本』」)は、クイーさんの来日の背景を伝えた。今回は、クイーさんが技能実習生として来日するに当たり直面したベトナムにおける「実習生ビジネス」について伝えたい。

■「実習生ビジネス」の広がりと100万円の渡航前費用
ハノイ市の若者。筆者撮影
ハノイ市の若者。筆者撮影
ベトナム人が技能実習生として来日することは、そうたやすいことではない。

ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(1)差別と搾取の技能実習制度と『憧れの日本』」で書いたように、クイーさんは、当時在籍していた専門学校の学内でのペーパー試験などの選考に加え、受け入れ企業との面接にも合格する必要があった。

さらに、なによりも大きなことは、日本にわたる前に、仲介会社(いわゆる「送り出し機関」)に対して、高額の渡航前費用を支払うことが求められたことだ。

クイーさんは来日に当たり、60万円程度を仲介会社に「保証金」として預けることが要求された。銀行口座をつくり、そこに60万円程度の預金をしてから、その口座の通帳を仲介会社に預けたという。

この「保証金」は3年という契約期間を満了すれば、手元に戻ってくるもので、契約に違反すれば没収されるという預け金だ。この「保証金」を取り戻そうとすれば、何か起こっても、途中で技能実習生としての就労をやめることができなくなる。

クイーさんはさらに、渡航前訓練センターで学ぶ日本語の授業料、ビザ(査証)やパスポートの手数料、航空券、各種の必要書類の手数料として、40万円以上を仲介会社に支払った。つまりクイーさんは来日前に、まだ何も稼ぎを得ていない段階で、日本へ技能実習生としてたるため渡航前費用として計100万円程度を支払ったことになる。

ベトナムの最低賃金は2016年1月に、最低賃金が最も高いハノイ市やホーチミン市などが入る「地域1」で月350万ドン(約157米ドル、約1万7,555円)に引き上げられた。

こうしたベトナムの賃金水準から見ると、100万円という金額は非常に大きなものになり、ベトナムの人々にとって簡単に支払うことができないものであることが分かるだろう。もちろん日本の水準から見ても、100万円は高額だ。

しかも、「仕事をする」という目的を持った人、つまりお金を稼ぐ必要のある人が、これだけの金額を支払うのだ。

ベトナムでは、技能実習生として日本にわたる場合、ベトナム労働・傷病軍人・社会省(MOLISA)の認可を受けた仲介会社を通じて手続きを行うことが必要になる。

技能実習生にとって仲介会社の利用は必須な上、仲介会社はその事業活動を活発化させている。そして仲介会社が設定する高額な手数料や保証金を支払うことが一般化している。

私が、ベトナムで、日本や台湾など海外への移住労働の経験者に、「なぜ仲介会社を使うのですか」とたずねた際、「仲介会社を利用しなければ、海外に行けない」と答えた人もいた。

ベトナムでは、技能実習生としての来日をはじめの送り出しは、もはや仲介会社が重要な役割を担う「実習生ビジネス」になっているのだ。

■詐欺事件、高額の費用、「保証金」という名の足かせ
ベトナムの農村。農村から海外へ出稼ぎに出る人は少なくない。筆者撮影
ベトナムの農村。農村から海外へ出稼ぎに出る人は少なくない。筆者撮影
技能実習生の多くはクイーさんのように渡航前費用として、渡航前訓練センターの授業料、ビザ、パスポート、各種手続きの手数料、航空券などの費用を仲介会社へ支払う。

渡航前費用は人によって異なるが、日本への技能実習生としての渡航の場合、100万~150万円という高額になるケースも少なくない。

さらに、渡航費用だけ徴収して、実際には海外に送り出さない仲介会社や、仲介会社を紹介するとして手数料をだましとる仲介者もおり、こうした詐欺行為によって大金を失う人も出ている。

また、クイーさんの事例のように「保証金」が渡航前費用に含まれるケースもある。「保証金」は契約を満了して帰国すれば返金されるが、契約を満了しなかった場合、返金されない。

■借金によって工面する渡航前費用、奪われる自由
海外への出稼ぎ者を出しているベトナムの農村。人々は希望を抱き農村を出る。筆者撮影
海外への出稼ぎ者を出しているベトナムの農村。人々は希望を抱き農村を出る。筆者撮影
一方、技能実習生として来日するベトナム人は、そもそもお金を稼ぐという目的を持った人たちであり、こうした大金を手元に持っていないケースがほとんどだ。
そのため、ベトナム人技能実習生の大半が借金をして、渡航前費用を工面している状況がある。私が移住労働経験者に話を聞いた中では、渡航前費用のほぼ全額を借り入れたというケースも少なくなかった。

つまり、技能実習生の多くは、ベトナムで普通に働くだけではとうてい稼ぐことが不可能な莫大な額の借金を背負った形で来日し、働くことになるのだ。

技能実習生は高額の借金につながれた形で就労することになる。

そのことは技能実習生の行動を制限することにつながるだろう。

借金があるために、就労環境や賃金をはじめとする処遇などに問題や不満があったとしても、受け入れ機関に対し、苦情や不満を訴え、状況の改善を求めることは容易ではない。

日本ではこれまでに、受け入れ機関が外国人技能実習生を「強制帰国」させるケースも発生しており、こうした中で、もしも技能実習の期間が満了するのを前に帰国させられることになれば、日本での技能実習生としての就労の中で満足に稼げないだけでなく、多額の借金が残ってしまうことになる。

そして、それだけ多額の借金をベトナムで稼ぐことが困難な中では、技能実習生とのその家族の経済状況は一気に悪化する。

こうした借金にしばられ、拘束された状況が、技能実習生の権利や自由を奪うケースもあるだろう。

借金をして来日するという、ベトナムから日本への技能実習生としての移住労働のあり方――。このことは「送り出し地」における「実習生ビジネス」をめぐる課題だが、同時に外国人技能実習制度を運用する日本にとっても関係のある問題だ。しかし、日本の政府や受け入れ機関はこの問題に対し、これまで真摯に取り組んできたことがあっただろうか。


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