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技能実習生、「中国人以外」にシフトジパング協同組合

category : ニュース 2016.3.23 
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 1993年に創設された外国人技能実習制度を利用して日本で働く実習生の国籍は、中国以外にも広がり始めている。法務省によれば、中国人技能実習生の数は2012年12月末から15年の6月末までに約14%減り9万6120人となった。背景に中国での人件費の上昇がある。実習生を採用する日本企業によると、最低賃金で中国人を雇用するのが難しくなっている。大量に押し寄せる安い輸入品との価格競争もあり、賃上げも難しいという。

 北京市の統計によると、14年の北京の平均月収は6463元(約11万1500円)だった。一方、14年度の日本の平均最低賃金で1日8時間労働で得られる月収は12万4800円ほど。加えて、12年末に第2次安倍政権が誕生して以来、円は対元で約20%下落しており、日本で稼いだお金が中国に持ち帰ると目減りする状況となっている。

 こうした背景から、ベトナム、フィリピンやインドネシアからの実習生が増えている。法務省の統計によると、技能実習生の国別内訳は12年末には中国が74%を占めていたが、15年6月末には53%に減少。同期間にベトナムは11%から25%に増えた。

◆自由に転職できず

 電子部品の一部であるコネクターの自動組み立て機を製造するTSS(東京都大田区)では6人の実習生をベトナムから昨年初めて受け入れたと、経営企画室の荒川信行室長は話す。現在は8人の中国人技能実習生もグループ会社である富山精研社(富山県下新川郡)とともに受け入れている。実習生は富山県の工場の生産ラインで働いている。

 荒川氏によると、両社とも基本給、割り増し残業代、組合の管理費などを合わせ1人当たり月約20万円のコストをかけているという。とはいえ、3年間の期限のある従業員はたとえ有能であっても昇進させるのは難しいという。荒川氏は制度を「ある程度フレキシブルにしてほしい」と訴える。「高く払って意味があるのは中長期的にコミットできる人。3年しかいないならそんな投資はできない」という。

 他の近隣諸国の賃金も上昇すれば、安価な労働力を確保するのは難しくなると指摘するのは、全国中小企業団体中央会労働人材政策本部長の小林信氏だ。制度改正の有識者会議のメンバーも務めた小林氏は、実習制度の拡充だけでは本質的な解決にはならないと指摘する。

 外国人技能実習生をサポートする指宿昭一弁護士は、期間が5年に延長されても自由に転職ができない点を問題視する。「時給300円でも、セクハラがあっても、黙って働け」という職場でも転職はできず、送り出した団体に多額の借金を抱える実習生は帰るに帰れない状況になるという。「日本の非正規労働者はひどい状況だと辞めていくが、技能実習生は動けない」と指摘。受け入れ側からすれば「やめない労働力が必要なんです」と話す。

◆失踪する「労働力」

 失踪する人もいる。法務省入国管理局によると、14年の失踪者数は4847人で、15年はそれを上回った見込みだという。14年は失踪者のうち60%以上が中国人だった。

 新幹線・岐阜羽島駅の南口から徒歩数分。黒い外壁の3階建てビルに岐阜一般労働組合が実習生向けに提供するシェルターがある。1階にはスーツケースがいくつも並び、取材した際には中国人9人が生活していた。辺りはシャッターやカーテンの閉まった店舗が多い。駅北口の小さな塔には「HASHIMA せんいの街」とうたわれているが、地元の繊維産業は衰退を続けている。

 張文坤さんがここに来てから数カ月。建設廃棄物処理などを業務とする栃木県の会社で働いていたときに、木材を粉砕する機械が誤作動し手を負傷した。3カ月の休養から復帰後、手の別の部分が痛み出したことを訴えると、会社は仕事を辞めるよう迫ったという。実習制度は「大失敗だ」「死んだも同然で無意味だ」と話した。

 張さんの元同僚3人も逃げた。そのうちの1人、林希俊さんは日本人同僚のいじめに苦しめられたという。その後、身元を隠して短期の仕事を複数した後に中国に戻った。中国の送り出し団体に6万元を支払って来日した林さんは、ほぼ文無しで帰国。大連近郊の町、瓦房店にいる林さんは電話取材に対し、「自分の夢はつぶされてしまった」「現実はずっと過酷だった」と話した。

 労働人口が減り続ける中で、技能実習生を含む外国人労働者は羽島市の将来に不可欠だと羽島商工会議所の清水政男専務理事は言う。実習生を「労働力として見ているのは否定しませんし、否定できません」と清水氏。

 松井聡羽島市長も、自治体活性化のために外国人労働者を受け入れるべきだとの考えだ。繊維産業の海外との価格競争、製造業の空洞化といった地域経済の課題を克服するにはもっと労働力が必要で、女性や高齢者の活用だけでは追いつかないと、松井氏と清水氏は口をそろえる。松井氏は、グローバル社会で頑張る外国人が1カ所に固まるのではなく、日本人と「共生するようなコミュニティーにすることが必要」と語った。


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