Home » ニュース » 被災企業 課題は「人手の確保・育成」が最多

被災企業 課題は「人手の確保・育成」が最多ジパング協同組合

category : ニュース 2016.3.12 
Pocket

東日本大震災で被災し、国の補助金を受けて再建した全国の企業を対象に経営上の課題を聞いたところ、人材の確保や育成を挙げた企業が最も多く、全体の6割近くに上ったことが、東北経済産業局の調査で分かりました。
この調査は、震災で被災した企業の再建を支援するために国から支給される、グループ補助金を受けた全国8500社余りを対象に、東北経済産業局が去年6月の時点で行い、水産加工業や運送業など6000社余りから回答を得ました。
この中で、現在の経営上の課題を複数回答で聞いたところ、「人材の確保・育成」と回答した企業が最も多く、全体の59.6%に上りました。次いで「販路の確保・開拓」と答えた企業が51.9%、「原材料価格の高騰」が29.3%などとなりました。
また、従業員数について聞いたところ、「震災直前に比べて減った」と答えた企業が全体の45.3%に上りました。業種別では、三陸沿岸の基幹産業である水産加工業のうち63.3%が「震災直前に比べて減った」と回答し、すべての業種の中で最も割合が高くなりました。
調査結果について、東北経済産業局は「水産加工業の人手不足は重大な問題だ。問題解決のために生産効率を高める取り組みを行うとともに、商品に付加価値をつけて売り上げを増やして賃金水準を高めていくなどの努力が必要だ」と話しています。

水産加工の現場は

被災地の企業の中には、従業員が十分に集まらず、復旧した設備を生かしきれないことから、売り上げを回復できない企業もあります。
宮城県気仙沼市でサンマやサバの加工品を扱う水産加工会社は、震災の津波で設備がすべて使えなくなりましたが、去年6月までに、補助金などを使って順次設備をそろえました。しかし、震災前20人いた従業員は、内陸に移り住んだり、ほかの仕事に就いたりして戻ってこない人も多く、8人に減りました。今は、人手が足りず、社長や専務の家族も作業を手伝っていますが、それでも作業が追いつかず、従業員に残業を頼むことも多いと言います。
会社ではおととしから、ハローワークに求人を出し続けていますが、運送業など待遇がよいほかの業種に人気が集まり、この半年間、応募の問い合わせはありません。営業活動の結果、大口の注文が来ることもありますが、人手が足りずに断らざるをえないケースもあるということで、会社の売り上げは震災前の7割ほどにとどまっています。
人手不足で魚の大きさを選別する機械が動かせなくなり、あらかじめ選別されたものを買うようになったことから、仕入れにかかる費用も2割ほど増えました。
男性従業員は「この業界は給料が高くないので、人を雇ってもほかの業界に取られてしまうことが多い。少ない人数なので1人で何でもこなせるようにならなければならず、大変です」と話していました。水産加工会社の清水浩司専務は「会社の経営を考えると、簡単に賃金は上げられず、苦しい状況が続いています。水産加工の魅力を少しでも知ってもらって従業員に来てもらえるよう、努力を続けたい」と話していました。

水産加工業に戻らない女性

被災地の水産加工業で働いていた人たちの中には、震災のあと、沿岸部から内陸に移り住み、仕事を辞めてしまう人も相次いでいます。
宮城県石巻市の仮設住宅に住む及川志津子さん(69)は、震災前、市内の沿岸部にあった水産加工会社で30年近くにわたって働いてきました。及川さんは、勤めていた会社が震災で被災して廃業したことから、一時は、ほかの水産加工会社に勤めることも考えました。しかし、及川さん自身も自宅が被災したため7キロほど離れた内陸の仮設住宅に移り住み、水産加工会社のある沿岸部まで通勤が不便になったうえ、津波の記憶から沿岸部で働くこともためらわれ、仕事を諦めることにしました。及川さんは「震災がなければ、70歳くらいまでは体が持つかぎりずっと働きたいと思っていました。震災で環境が変わらなければ今も働いていたと思う」と話していました。

女性が働きやすい環境整備で人材確保を

人手不足の解消に向けて、被災地の企業の中には、社内に保育施設を作るなど、女性が働きやすい環境を整備することで若い女性の従業員を呼び込もうとする取り組みが始まろうとしています。
宮城県石巻市にある従業員およそ40人の水産加工会社では、売り上げが震災前の8割ほどにとどまっています。震災前の水準まで回復するには従業員があと5人ほど足りないということですが、ハローワークに求人を出しても人が集まらず、人材の確保が課題となってきました。
こうしたなかで、この会社は、女性が働きやすい環境を整備し従業員の確保につなげようと、従業員向けの保育施設を社内に設けることを決め、来月から子どもの受け入れを始めることになりました。保育士を2人雇い、営業時間にほぼ合わせて午前8時から午後6時まで子ども6人を預かるようにします。来月には、育児休暇から復帰する従業員1人が施設を利用する予定で、当面、従業員以外からの子どもの受け入れも検討しています。
また、女性にアピールしようと、従業員の作業服もピンクを使った華やかなものに変えました。
従業員の68歳の女性は「新しい作業服は明るい気持ちになれる。若い人たちにも似合うし、格好いいと思うので、若い人たちにはどんどん入ってきてほしい」と話していました。水産加工会社の木村一成社長は「若い人たちに来てもらわないと、水産加工業は将来、立ち行かなくなる。せっぱ詰まった状態であり、何としてもこの取り組みを成功させたい」と話していました。

宮城県が人材確保支援の取り組み

水産加工業で人手不足が深刻化していることを受けて、宮城県は、企業の人材確保を支援する取り組みを始めています。
今年度から、被災地の企業が従業員向けの宿舎を建設する際に費用の半分を補助する制度や、水産加工業の組合を対象に従業員の送迎バスを運行する際、費用の半分を補助する制度を始めました。
また、国に要望し、外国人技能実習生の受け入れ人数を拡大できる特区の認定も受けました。
宮城県水産業振興課の小林徳光課長は「人手不足の解消のためには、業界が一体となって働きやすい環境を整備し、アピールしていく必要がある。基幹産業の水産加工業の復興なくして被災地全体の復興はないと考えており、課題の解決に向けて、県としても後押しをしていきたい」と話しています。

コメントフォーム

Copyright(c) 2016 ジパング協同組合 All Rights Reserved.