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(人口減にっぽん)ミャンマー人材、争奪戦 実習生、1年半で10倍超ジパング協同組合

category : ニュース 2016.1.12 
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 経済交流が活発化しているミャンマーが労働力の「供給地」として脚光を浴びている。日本もミャンマーに注目していて、技能実習制度での受け入れが1年半で10倍以上に増え、他国と人材を奪いあう。ただ、働き手が低待遇になりがちな実習制度はほころびが目立つ。「あこがれの国、日本」というブランドは、もはや通用しなログイン前の続きいとの指摘も出ている。

 ミャンマー最大の都市、ヤンゴン中心部。昨年9月、福島県の建設業者4社による技能実習生の合同面接があった。約40人の候補者が中庭に控え、名前を呼ばれると5~6人ずつ面接の部屋に入る。

 候補者は、履歴書をながめる日本人経営者の前に立つと、覚えた日本語でアピールした。「日本で働くのは大きな夢です」「お金を稼いでお母さんを楽させたいです」

 東部のカヤー州出身のアルバートさん(30)は夜行バスに16時間揺られてヤンゴン入りした。ミャンマーの工場で働くと、稼ぎは月1万5千円前後とされる。タイで月2万~3万円を稼いだこともあったが、それほど金はたまらなかった。父母含め7人家族を支える独身。「日本に行って、できれば月10万円ぐらい仕送りしたい」という。

 建設業者は、目をつけた候補に絞って面接を重ね、14人に「採用」を告げた。建設業の経験があったアルバートさんも、残った。

 足場工事の佐藤剛建(福島県いわき市)は、すでにミャンマーから3人を受け入れていた。東日本大震災後の人手不足で、7千~8千円だった地元の建設業の日給は、1万5千円ほどに急騰。震災前の水準の給料でも働いてくれる即戦力として、実習生を受け入れた。佐藤剛社長は「人手不足をミャンマー人が支えている」。

 人口約5千万人のミャンマー。2011年に民政移管すると、日本との交流が加速。13年末に120人だったミャンマー人実習生は15年6月に1378人と1年半で10倍以上に増えた。ミャンマーでの実習生の採用に関わるSBS国際産業人材育成センター(東京)によると、昨年1年間だけで約60社が面接し、約250人の雇用に結びついた。

 ■日本ブランドに陰りも

 ヤンゴンで実習生の面接があった翌日、このオフィスにベトナムの人材会社の幹部が視察にやってきた。日本に実習生を送り出しているが、ベトナムで人材が確保できなくなった時を見すえ、日本に送り出す人材の次の発掘先にとミャンマーを考えているという。

 いまベトナム人の実習生は約4万5千人で、中国に次ぐ多さだ。実習生全体にしめる割合も10年の8%から15年には25%になった。しかし、この先も増え続けるかは分からない。

 ベトナムには近年、欧米や日本を含むアジア企業が次々と工場を移している。最低賃金は年10%以上のアップが続いており、工員は月収3万円ほどだという。この幹部は「いまは円安で、日本で手取り7万~8万円では困ってしまう。10万円ぐらいもらえるならいいのですが」と話す。

 自国が豊かになれば、わざわざ日本に行く必要はない。すでに中国からの実習生は減り始めている。

 ミャンマーでは、日本はまだ魅力的な国だ。ヤンゴン市内で、若者に日本の印象を尋ねると「経済力が魅力」「給料がいいと聞いた」「文化や生活が面白そう」と頬を緩める。

 ただ出稼ぎ先は、日本だけではない。近隣のシンガポールが人気なほか、韓国も受け入れに力を入れる。韓国の建設業者で働き、里帰りしていたタイッサンさん(29)は「月給は手取りで月1500ドル(約18万円)。住まいもあるし、給料も伸びている」と話す。

 ミャンマーで人材支援などを手がけるジェイサットコンサルティングの西垣充社長は、こう語る。「もう『日本だから』というだけで、喜んで来てもらえる時代ではなくなっている」

 ■待遇に不満、失踪者急増

 「『あ』のつく言葉は?」。日本人の女性が尋ねると、ミャンマー人実習生は「あたま」「あいさつ」「あいしている」と、口々に日本語をあげた。

 ミャンマー人の採用に関わるSBSが、新潟県糸魚川市でやっている研修だ。来日直後の1カ月、地元の人たちと交流しながら日本語や生活マナーを学ぶ。渋谷修二理事は「ミャンマー人は待遇に不満があっても何も言わない。何か困った時に、相談しにきてくれる関係をつくれればいい」。

 15年に失踪した技能実習生は10月までに約4930人。ミャンマー人は1~6月の上半期だけで127人が失踪し、14年の107人を上回った。実習生は原則として働き先を変えられない。待遇に不満があって逃げるケースもあるとみられる。

 昨秋、20代のミャンマー人の女性が、都内のAPFS労働組合(山口智之執行委員長)を訪れた。実習生として昨年1月に入国し、岐阜の縫製工場で働いたが2カ月で工場を離れ、新幹線で関東地方に逃げた。

 女性は「月10万円ぐらい稼げると聞いていた。1カ月分として5万円をもらった後は、もらえなかった」。未払いの賃金を取り戻したいという。女性は「早く働きたい。月20万は稼ぎたい」と話した。

 山口さんは職場の紹介はしないが、その後、女性が「飲食店で働いている」と間接的に聞いた。

 ミャンマーの海外労働者派遣業協会のミンフライン会長は「日本では介護人材が不足するとも聞いた。ミャンマーから何人でも送り出したい」というが、「失踪を防ぐには給料を上げることが必要だ」と話す。

 (ヤンゴン=末崎毅、機動特派員・織田一)

 ■<考論>日本人との均等待遇、実現を

 お茶の水女子大の宮島喬・名誉教授(社会学)の話 日本の人口が減少していく中で、外国人労働者を受け入れて人手不足を補うのは一つの考えだ。ただ、いまの技能実習制度は、実習生が職場を自由に変えられないなど問題が多い。実習生は「労働者」として受け入れられているのに、待遇に不満があっても他に移れない。このため低賃金や賃金不払いを強いられ、失踪につながっている。同じ仕事をする日本人との均等待遇を実現し、移動の自由も認めるべきだ。また労使双方が就業継続をのぞむことを条件に、在留資格の更新を認めてもよいのではないか。


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