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(上)「人、要りませんか」紹介料3万円 「人づくり」美名の陰で外国人酷使ジパング協同組合

category : ニュース 2015.3.8 
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 「人、要りませんか」

 およそ3年前。スマートフォンの製造工場に出入りしていた人材派遣業の社長(51)に、顔見知りのベトナム人の男が売り込みをかけてきた。就労希望の同胞を紹介する、という。

 スマホは生産台数の増減が激しく、月によって従業員数も変動する。「生産ラインを増やしたい」と数十人単位で派遣依頼があっても、日本人は簡単に集められない。

 危ない話だと即答は避けたが、背に腹は代えられなかった。男の申し出に乗った。紹介料は1人3万~5万円-。即座に人を回せばまた次があった。気がつけば100人以上のベトナム人らに仕事を斡旋(あっせん)するようになっていた。

自由に転職できず

 彼らの大半は「技能実習」の在留資格で入国していた。

 日本で培われた技術の伝承を通じ、途上国の「人づくり」に貢献する。それが外国人技能実習制度だ。だが、そんな高尚な理念とは裏腹に「単純労働で外国人を酷使している」と批判が絶えない。

 農・漁業、建設、縫製…。働くことができるのは、来日時に申請した1カ所の実習機関のみ。自由に転職はできない。社長の元に集まっていたのは、そこから抜け出した失踪実習生たちだった。

 失踪者を工場に派遣すれば入管難民法違反(不法就労助長)の罪に当たる。「犯罪だと分かっていた」と社長も認めるが、人集めのために目をつぶった。

 「実習生のときは4、5万円しか月給がもらえなかった。そんな人が何人もいた」。ピンハネする実習先より、時給千円、残業代も保証する自分のほうがまともという自負さえあった。

 昨年、社長は警察に逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けた。当時派遣していた約50人のベトナム人は入管当局に引き渡された。登録者数は200人を超えていたが、摘発を逃れたベトナム人の行方は社長にも分からない。

 派遣業は廃業したが、たまに電話がかかってくるという。「ベトナム人はね、今でも『仕事がほしい』と言ってきますよ」

「貯金ができない」

 中国人の女性技能実習生2人が、広島県三原市の縫製工場から姿を消したのは昨年3月のことだった。来日してまだ1年足らず。月給は約13万円で、そこから寮費や国民健康保険料を差し引かれ、手取りは7、8万円程度だった。

 「思ったより貯金ができない。職場の人間関係も不満だった」

 縫製工場を後にした2人は、ネットで知り合った中国人ブローカーを通じ、埼玉県の人材派遣業者と引き合わされた。

 この業者も在留資格は問わなかった。県内の食品運送会社の支店を紹介された。大型冷蔵庫内での仕分け作業だった。「朝から晩までずっと冷蔵庫。寒くてつらかった」。1人は2カ月でまた失踪した。

 広島県警は1月、この支店の支店長代理(47)ら2人を入管難民法違反容疑で逮捕した。ここだけで40~50人の中国人が働いていたという。会社側も在留資格を確認していなかった。担当者は「それは派遣業者が調べるべきものだ」と話した。

「怠惰な日本人が増えた」

 一方に人手不足の産業があり、一方に仕事が欲しい外国人がいる。人材派遣業者をフィルターにした不法就労の需給調整がなされ、それ抜きに成り立たない現場が存在する。
 有罪判決を受けた社長は人手不足は労働人口の減少だけでなく、厳しい労働を嫌がる「怠惰な日本人が増えたからだ」と言い放つ。

 一方、実習制度で大金を稼げると信じ、中国人がこぞって訪日する時代も終わった。本国での人件費が高騰するなか、日本の最低賃金で働くうまみは、円安もあってなくなってきている。実習生受け入れ団体の関係者は嘆く。「中国ではもう、人が集まらない」

 来日前に見た夢と、実習の現実。より良い仕事を求めて制度を抜け出した“非移民労働者”たちが異境をさまよっている。


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