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クローズアップ2015:外国人技能実習 期間、職種を拡充 制度のゆがみ放置ジパング協同組合

category : ニュース 2015.2.14 
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 ◇名目、途上国支援 実態、人手不足の解消

 途上国の若者らを最長3年間受け入れる国の「外国人技能実習制度」について、法務省と厚生労働省の有識者懇談会が先月末、滞在期限を5年間に延長し、監督態勢を強化することなどを柱とした報告書をまとめた。政府は今国会に関連法案を提出し、来年度中の施行を目指すが、今回の見直しでも「実習」の看板は残ったままだ。「途上国支援」を建前にして、外国人を安価な労働力として受け入れ、日本の人手不足を補うという制度の根本的なゆがみは是正されそうにない。【河津啓介】

 「目的は労働力確保ではない」。制度見直しについて、厚労省と法務省の担当者は強調する。だが、狙いが「労働力」にあることは明らかだ。見直しの方向性を決定づけたのは、昨年6月に閣議決定された「成長戦略」だった。

 戦略策定に向け、官民でつくる「産業競争力会議」の分科会を中心に人口減少社会を見据えた経済政策が議論され、滞在期間の2年間延長や、介護分野への職種拡大が早々に打ち出された。分科会の財界出身議員は「人手不足は喫緊の課題」「技能実習制度を労働力確保に生かすべきだ」と強調、「途上国支援」にこだわり慎重姿勢をみせる政府側を批判した。

 民間議員主導で、中長期にわたって外国人を受け入れることを想定したような就労制度の整備も提言され、成長戦略には「中長期的な外国人材受け入れの総合的検討」との文言が盛り込まれた。国際労働市場の問題に詳しい佐藤忍・香川大教授(社会政策)は「国が人手不足の現実を認め、外国人労働者の必要性を明確にしたことは大きな転換点だった」と話す。

 ところが、制度の枠組みを具体的に議論する法務省と厚労省の有識者懇談会に議論の場が移ると、政権肝いりの成長戦略の会議で守勢に回っていた両省の担当者が主導権を握った。背景にあったのは「移民受け入れ」への根強い抵抗感だ。政権内からも「外国人材の活用が移民政策と誤解されてはならない」との声があった。

 議論の主題は「労働力確保」から「技能実習制度の拡大解釈」へとすり替わり、有識者懇談会は先月末、成長戦略に盛り込まれた拡充案を追認する報告書をまとめた。「国際貢献」の文言が何度も登場する一方で、人手不足の問題は触れられなかった。特定の職場で働くことを前提に在留を認められている実習生は、職場を離れれば日本にいられなくなる。報告書には監督機能や罰則の強化策が盛り込まれたが、実習生が今後も転職の自由すらない弱い立場に置かれ続けることに変わりはない。

 こうした状況に、政府関係者からも「もうカムフラージュはやめた方が良い」「日本の労働力確保にも役立てることを制度の趣旨に含めるべきだ」との声が漏れる。

 外国人労働問題に取り組む指宿昭一弁護士は「罰則や監督態勢の強化など、これまでも制度の見直しが繰り返されてきたが、効果はなかった。真の目的は労働者の確保にあるのに、いつまでまやかしを続けるのか」と批判。「実習制度にこだわる限り問題は解決しない。外国人を雇用主と対等な労働者として受け入れる新たな制度を作る必要がある」と指摘した。

 ◇人材獲得、アジアで激化

 「来日するための費用や家族と離れて生活することを考えれば、中国で働いた方が良かった」。首都圏の建設現場で働く30代の中国人実習生は苦笑いした。

 外国人からみれば、日本での実習は「出稼ぎ」に他ならない。経済成長を続ける中国では給与水準も上昇しており、実習生の中には母国で月10万円近くを稼いでいたという人もいる。

 一方、日本での実習生の平均賃金は、最低賃金レベルの月約12万円。来日費用は母国での年収に匹敵し、実習先でのトラブルを理由に途中で帰国した場合は、法外な「違約金」を現地の派遣業者に支払う契約を強いられているケースも珍しくない。過酷な労働実態は中国でも広く知られているうえ、最近の円安もあって、日本で実習する魅力は低下しているという。

 そうした「変化」を、日本の受け入れ側も感じ取っており、「中国人も豊かになってハングリー精神が薄れた。きつい仕事を嫌がるようになった」(農業団体職員)との声も出ている。日本の仲介団体は、安価な賃金でより熱心に働く人材を求め、近年はカンボジアやミャンマーにまで募集の手を広げるようになった。

 実習生の出身国を見ると、中国が最大の送り出し国だが、全体に占める割合は2011年末時点の75%から、昨年6月末には65%にまで低下した。その間に実習生の総数は2万人増えている。中国人の減少分を他のアジア諸国が補い、上乗せしている格好だ。

 一方、労働力確保は日本だけの課題ではない。アジアでも人材獲得を巡る国際競争は激しさを増している。「採用試験の倍率が下がっている」「他国で就労ビザが簡単に発給されるため、日本が選ばれなくなった」。昨年、実習制度の運営を支援する公益財団法人「国際研修協力機構」が受け入れ団体・企業1103機関に実施したアンケートには、こんな声が寄せられた。

 例えば、韓国は04年に外国人労働者の受け入れに踏み切り、現在は最長で通算約10年間の就労が可能だ。シンガポールは華僑・華人が多く中国人労働者が溶け込みやすい上、英語が公用語で他国の労働者が働きやすい。マレーシアも多民族、多宗教国家だ。

 ベトナムの労働者派遣会社の日本駐在員は「出稼ぎ労働者は長く働けて、待遇面で恵まれた国を選ぶ。日本語は難しく外国人にはハードルが高いし、他の国と比べて特別に条件が良いわけではない」と指摘する。各国が人材確保に手を打つ中、外国人労働者への門戸を閉ざしたまま技能実習制度の拡大解釈を続ける日本の「ガラパゴス化」が際立っている。

 明治大の山脇啓造教授(移民政策)は「日本は既に多くの外国人を受け入れ、定住も進んでいる。少子高齢化が進む中、国の活力を維持するには、社会の多様化はもはや避けられない。外国人の出入りを管理するだけでなく、外国人の権利や生活環境を支える政策を実行し、日本人と共生できる社会を築くべきだ」と提言している。


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