Home » ニュース » どうする外国人介護職 技能実習制度で受け入れ論

どうする外国人介護職 技能実習制度で受け入れ論ジパング協同組合

category : ニュース 2014.12.10 
Pocket

 「ハイ、左足を上げてくれませんか。ワン、ツー」
 東京都板橋区の特別養護老人ホーム「ケアポート板橋」。勤務するフィリピン人介護福祉士のエハーシト・ピンキー・アルバレスさん(36)が、車いすの女性と体操を始めた。少し汗をかいたところでハイタッチで終了。アルバレスさんの人懐っこい笑顔に、お年寄りの顔も自然にほころんだ。
    □   □
 深刻な介護人材不足に伴い、外国人職員受け入れの議論が活発化している。
 政府は六月に閣議決定した新成長戦略で、外国人雇用の特例である技能実習制度の対象に介護職を加える方針を打ち出した。開発途上国の外国人に職場教育を通して知識や技能を身につけ、帰国後に生かしてもらう目的で創設された制度。現在、実習職種は農漁業、建設、食品製造など「モノ作り」が主の六十八種に限られ、三年の期限付きで約十五万人が在留している。
 こんな制度に介護はなじむのだろうか。「介護や福祉分野は、単に労働力が確保されればいいというわけではない。日本語による十分なコミュニケーション能力をはじめ、利用者や同僚との信頼関係づくり、いわば福祉マインドを養成する教育が現行制度で十分にできるのか」。こう疑問を呈するのは、結城康博・淑徳大教授(社会保障論)だ。
 国内には、アルバレスさんのように介護の仕事を担うため来日した外国人が既にいる。インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定(EPA)に基づく受け入れだ。施設で働きながら日本語や介護技術を学び、四年目に介護福祉士の国家試験を受けるのが条件。合格すれば、日本で働き続けられる。二〇〇八年開始の事業では千五百三十八人が来日し、合格者は二百七十四人(一四年十月一日現在、国際厚生事業団調べ)。受験の失敗や家庭の事情で帰国した例を除き、介護福祉士か候補者として働いているのは現在千人余という。
    □   □
写真
 EPAでは、日本人と同等以上の報酬や国家試験に配慮した研修計画作成など受け入れ側にも厳しい条件がつけられる。その上に施設独自の努力もあって、ようやく人材が育つ。「仕事、学習、生活の各面で支援が必要。しかし、彼らの懸命さやホスピタリティーから学ぶ点も多く評判も良い」。過去六人のEPA研修生を受け入れたケアポート板橋の須田潔施設長は言う。
 政府は十月から、有識者検討会で介護分野の技能実習生受け入れの在り方を論議。実習前に日本語能力、一定の実習後に技能評価の試験を課すことなどで一致しているが、EPAほど厳格さを求める方向にない。技能実習では、EPAの数十倍を受け入れなければ「焼け石に水」(都内の介護事業者)になるからだ。
 これに対し結城教授は、現行では、送り出し国の仲介業者が多額の経費を徴収し、借金漬けの実習生が来日後失踪するなどの問題を起こす例がある点も指摘。「外国人介護人材は将来的に必要不可欠だろうが、安易な受け入れは質の低下を招き、かえって日本人の人材不足も進む。仕事の公共性や実習生の人権の問題などもきちんと議論して対応するべきだ」と注文する。
 介護事業所側の賛否も割れている=グラフ。「ゴリョウシャサマ(ご利用者さま)から『ありがとう』と言われることが楽しい。日本語はまだ難しいけど、頑張ります」。アルバレスさんらに続く人材を育てる意義を真剣に考えるときだ。


コメントフォーム

Copyright(c) 2014 ジパング協同組合 All Rights Reserved.