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迎える「外国人活用の足元」(1)「勤勉」貴重な労働力ジパング協同組合

category : ニュース 2014.8.27 
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 数百度の高温になる溶けた亜鉛の中に、金属部品が次々に沈められていく。金属加工メーカー、日東亜鉛川崎工場(川崎市川崎区)のラインで行われているのは、建築鉄骨や鋼管などのメッキ加工だ。

 10メートル近い大型の部品も、クレーンでつるされて動いてくる。ラインで働く外国人技能実習生にとって、「危ない」という言葉を瞬時に理解できることも、安全確保には欠かせない。

 「日本語は難しいです」。ベトナム出身の外国人技能実習生、グエン・バン・ズオンさん(28)は笑うが、仕事の合間に挑んだ日本語検定3級に昨年合格。今は、7月に受けた準2級試験の結果を待っている。

 母国では防災機器の営業をしていたが、研修をしながら、本国以上に収入を得るため来日を決意。職場で経験を積むごとに給与も増え、送金もできるようになった。3年間の実習期間は今が最終年度。「機会があれば戻ってきたい」と話す。

 「非常に勤勉。実習期間に日本人従業員の技能を上回る人もいる」。これまでに16人受け入れてきた技能実習生に対する光村邦広工場長の評価は高い。

 技能実習制度の目的は「発展途上国への技術移転」。だが、人手不足は慢性化し新人採用には毎年苦労しているのが実態だ。「貴重な労働力」として、技能実習生の存在感は年々高まっている。

 政府が成長戦略の一環として外国人材の活用を目指す方針を打ち出した。今後、県内でも多くの新戦力をえることになりそうだ。一方、多様な外国人を受け入れてきた神奈川は、外国人と共存する課題と向き合ってきた“先進地”でもある。新たな人材の受け入れ準備は整っているのか。現場から考える。

◆「要は出稼ぎ」批判も

「人材不足でお困りではないですか? 外国人の雇用制度が拡充されます。当団体で仲介いたします」

 今年4月の経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で、安倍晋三首相が外国人材活用の方針を明示して以降、横浜市内の中堅ゼネコンには毎月2~3本の営業電話がかかってくるようになった。

 「ネパール、カンボジア、インドネシア、中国、フィリピン…。得意とする国の人を送り込んでくれるという。『仲介手数料1人当たりいくらでやります』と。実態の分からない団体も急増している」。同社幹部は明かす。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」効果で公共事業だけでなく民間でも建設投資が増加、さらに2020年の東京五輪に向けた建設ラッシュも控える。恒常的な人手不足にある業界を見透かすかのような、外国人技能実習生のあっせん合戦。この幹部は、今後の業界の行く末を不安視する。

 成長戦略で政府は、従来は3年だった技能実習生の滞在期間を5年に延ばすほか、対象職種に介護などを追加することを検討。一度帰国しても一定期間空ければ再実習を認める方針だ。

 一方、技能実習制度には長時間労働や賃金不払いなどの問題が付きまとい、海外からも強制労働の温床になっているとの指摘が絶えない。過労死が疑われる突然死も相次いでいる。成長戦略では対策として、人権侵害を防ぐ指導態勢も強めることを盛り込んでいる。

 だが、現場からは「実習生は帰国しても、学んだ技術を生かした仕事はしていない。要は出稼ぎ」との声が漏れる。「技能実習制度は事実上、移民政策の入口だ」との指摘も。

 法務副大臣在任中に法務省の外国人受け入れ問題のプロジェクトチームを率いた自民党の河野太郎衆院議員(神奈川15区)は、「技能実習制度はいかさま」と見直しを主張してきた。「日本経済にとって人口減少は最大の課題。今の技能実習制度見直しの議論は、外国人を労働力として認めるという本質に背を向けている」と批判している。

◆新制度で多様性発揮

 成長戦略は、安倍政権の経済政策アベノミクスの第3の矢。6月の改定では、「多様な価値観や経験、技術を持った海外からの人材に能力を発揮してもらう」として、外国人材の活用に力を入れる方針を明確に打ち出した。

 外国人技能実習制度に関しては、監督強化を前提にこれまで68職種だった対象の拡大や実習期間の延長を実施する方針。2020年東京五輪に向けた人材の需要増をにらみ、建設・造船分野でも外国人材活用の新制度を導入するとした。

 アベノミクスの一環として区域を限定して規制を緩和する「国家戦略特区」では、外国人による起業を促すための支援窓口を設置。外国人の家事サービス人材の受け入れに向けた検討も急ぐ。教育分野では、国内大学強化に向けた外国人材確保の必要性を強調。学校の英語教育現場でも、外国人活用による実践的な教育を目指す。

 その一方、成長戦略ではこうした外国人材の活用策が「移民政策と誤解されないように配慮する」とくぎを刺している。安倍晋三首相も6月の会見で、移民の受け入れについて「諸外国でもさまざまな難しい経験を経ている」と説明し、慎重な姿勢をあらためて示した。

 ◆外国人技能実習制度  発展途上国の経済・産業発展の担い手の育成支援のため、人材を一定期間、日本国内の産業界で受け入れ、技能の修得を支援する制度。1993年に創設され、建設や製造、農業など対象は68職種で、実習期間は最大3年。運用面をめぐっては、低賃金労働や長時間労働をはじめとする実習生への人権侵害が絶えないとの指摘が国内外から上がっており、制度の抜本的改革が急務とされている。


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