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直撃受けるデフレ適応型経営、企業業績伸び悩む懸念もジパング協同組合

category : ニュース 2014.7.25 
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アベノミクス景気の副作用ともいえる労働力不足が、製造業、非製造業を問わず、企業活動に深刻な影響を広げている。東京五輪をにらんだ工事需要が増えている建設業だけでなく、デフレ下で低価格を武器に成長してきた外食、小売り、格安航空、さらには地方の中小企業などでも状況の悪化が続く。政府が打ち出した外国人労働者の活用なども抜本的な効果は期待できず、賃金上昇や事業縮小による業績伸び悩みの懸念が出始めている。

<3年後も解消せず>

「人手不足は全産業の半数近くで発生。3年後も解消せず」──今年6月に国内250社を対象に行ったロイター企業調査では、労働力不足の厳しい様相が浮き彫りになった。

国内の事業で人手が足りない部署があると答えた企業は卸・小売りなどの非製造業では65%に上り、製造業でも3割が同様の回答。3年後の見通しについても、およそ半数が現在の人手不足が解消しないとの見通しを示すなど、かつて企業が人員余剰に苦しんだデフレ下とは様変わりした状況が広がっている。

労働力不足がこのまま続けば、景気回復のボトルネックになる可能性があるとの懸念も強まってきた。日銀は今月7日に開いた全国支店長会議で、消費税引き上げの影響は想定内にとどまっているものの、建設業などの人手不足が住宅投資を圧迫するなど、今後の景気拡大にとってリスク要因であるとの認識を示している。

「人手不足について、最も影響が大きいのは建設関連。(今の状態が続けば)企業の新規投資に制約を加えかねない」とモルガンスタンレーMUFG証券のチーフエコノミスト、ロバート・フェルドマン氏は話す。

例えば、大手ホームセンターチェーンのコメリ 。店舗拡大をしようにも、「建設労働者が足りなくなり、結果的に新店舗の建設コストが去年よりも20─30%も上昇している」(佐々木学・IR担当)という状況だ。建設コストが高止まりするという想定で、「店舗デザインや 建設の方法などを見直してコスト吸収を図っていく」(同)などの対応を余儀なくされているという。

<あおり受ける低価格ビジネス>

労働者不足のあおりを直接に受けている分野の一つが、コストを抑えた低価格戦略で成長してきたデフレ適応型ビジネスだ。外食チェーンのすき家は、人手が確保できないとして4月のピーク時には全国123店舗の一時・時間帯休業を発表。ワタミ も、傘下の居酒屋の1割にあたる60店舗を閉店する方針だ。

割安路線で経営拡大の上昇気流に乗ってきたLCC(低コスト格安航空)も、人手不足の向かい風を受けている。パイロットが確保ができなくなったため、全日本空輸(ANA) 系列のLCC、ピーチ・アビエーションでは10月までに全フライト数の16%にあたる2000便以上をキャンセルする予定と発表した。同じ全日空系LCCのバニラ・エアも6月に154便の減便を実施している。

政府が発表した5月の有効求人倍率は1.09倍に上昇。1992年6月に記録した1.10倍以来、21年11か月ぶりの高水準に達した。完全失業率(季節調整値)も16年5か月ぶりの3.5%に低下し、労働市場が完全雇用に近づいていることを示した。

労働需給のひっ迫で賃金相場が上昇傾向にある中、東京商工リサーチは7月8日、人手不足の深刻化に伴い、2014年上半期に「求人難」型倒産が10件発生したと発表した。「人手不足」関連の倒産では、事業継承の課題が深刻化していることを背景に「後継者難」が多いものの、「求人難」型は6月だけで5件発生しており「今後の増勢が懸念される」という。

<外国人労働力頼みに懸念も>

「労働市場の硬直が続けば、労働力不足が日本経済の成長を阻むボトルネックになるリスクは高い」とみずほ総合研究所のシニアエコノミスト、山本康雄氏は指摘する。「労働市場をもっと流動化させる努力が必要だ。それによって成長産業へ人材をシフトする一方、外国からの移民も含めた労働者数の拡大も必要になる」。

政府は6月24日に発表した「日本再興戦略」(成長戦略)の中で、「外国人技能実習制度」の大幅な緩和を打ち出し、海外からの人材確保の拡大に乗り出した。発展途上国の未熟練労働者に現場で技術を習得する機会を与えることが狙いで、企業側にとっては現場で不足している単純労働職を補う効果もある。

ただ、高い技能を持つ熟練労働者の確保にはつながりにくい。ロイター企業調査では「高度なスキルを持ったIT技術者を必要だが、日本人とコミュニケーションが取れることが前提」(電機)、「優秀なスキルある人材が少ない」(輸送用機器)など、採用するうえでの問題点が多く指摘された。

また、帰国を前提にしているとはいえ、外国人研修生の受け入れ拡大は事実上の移民労働者の容認にもつながる可能性がある。同調査では、「単純労働者の受け入れは貧しさを分かち合うだけで、(低賃金を定着させるので)デフレに逆戻りする危険性がある。特殊技能者のみ緩和すべき」(化学)、「拙速な人員増強はリスクもある。慎重に進めてほしい」(輸送用機器)など、政府に中長期的な影響を念頭に置いた制度運用を求める声が目立っている。

 


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